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53歳・シングルマザー。肝心なときに逃げてしまう夫と「同じお墓に入りたくない」と思いました~私、ひとりでいてもイイですか?(32)~

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53歳・シングルマザー。肝心なときに逃げてしまう夫と「同じお墓に入りたくない」と思いました~私、ひとりでいてもイイですか?(32)~

本企画は、ひとりでいるのが好きな人も、ひとりでいるのが寂しいと感じる人も、“おひとりさま生活”について思いのたけを語るインタビュー連載です。インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さん。
今回登場するのは、50歳過ぎに再上京し、派遣で働きながらライター業を副業としているシングルマザー。もうすぐ社会に出るひとり娘との時間を今大切にしているそうです。「弱い自分も含めて見せられる恋人は欲しい。でも、結婚はもういいです」と言いきるようになったのには、それなりのワケがあるようです。

Writer : 大宮冬洋 (おおみや・とうよう) (フリーライター)

フリーライター。恋愛・結婚に関するインタビュー記事を得意とし、最近は「お見合いおじさん活動」も勝手に遂行中。35歳以上で結婚した「晩婚さん」を160人以上取材した実績を持つ。2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。近著に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)がある。

Contents 目次

50過ぎてからの再上京。今は大学生の娘との2人暮らし

50歳を過ぎてから上京して仕事を探し、現在は大学生のひとり娘と東京郊外で一緒に暮らしている女性がいる。ある研究機関で派遣社員として働いている井上麻紀さん(仮名、53歳)だ。以前は東海地方の実家で母親との2人暮らしだったが、「娘が進学で出ていってからは母と衝突することもあって息が詰まっていました」と井上さんは明かす。

今、学生生活の残り時間を母である自分と住むことになってしまった娘が同じことを感じているかも、と苦笑いする。成人した子どもとの関係はそれぐらいのほうが正解なのかもしれない。どちらも居心地がよかったらいつまでも巣立つことができなくなる。

井上さんにはほかにも仕事がある。「ライフワーク」であるライター業と「ライクワーク」であるパン作り。派遣社員として生計を立てつつ、やりがいを感じる分野でも社会とつながっているのだ。33年前に地元の短大を卒業した頃に遡って話を聞くことにした。

***井上麻紀さん(仮名、53歳)の話***

夫の転勤で東京へ。生き生きした働き始めた私、意気消沈してしまった夫

短大を卒業した頃はバブル経済期でした。証券会社の支店に採用されて3年半ほど働き、結婚して退職したんです。
結婚するまでは、不誠実な遊び人と付き合っていました。20代の頃ってちょっと悪い人が魅力的に見えたりしますから。今、娘が付き合っていたら大反対するような人です(笑)。その彼と別れた直後に人の紹介で会ったのが元の夫です。寂しかったし、誠実そうに見えたので、付き合って1年半で結婚しました。

元夫の転勤で横浜に引っ越したのは27歳のときです。関西人の夫は関東の空気が合わずにストレスを抱えていました。私のほうはもともと興味があった編集・ライターの学校に入り、先生の紹介で少しずつ仕事が増えていった時期です。
東京で羽を伸ばして楽しそう働いている私を傍らに見て、元夫は面白くなかったみたいです。夫婦の絆を深めるためもあって子どもを作ったのですが、時すでに遅しで亀裂は直りませんでした。

実家の苦境と妊娠・出産が重なった30代前半。まったく頼りにならない夫への不満

娘を妊娠した頃はちょうど実家も大変なことになっていました。商売をたたんだりして借金を抱えていた父が、病気で余命半年の宣告を受けたのです。私にとっては人生の転機で、一番頼りたいのはもちろん配偶者でした。でも、元夫は肝心な話からは逃げてしまうのです。

お腹が大きくなって体もつらいのに、頼りにならない元夫への不満が積み重なったのだと思います。出産してからすぐに実家に戻り、元夫とはしばらく距離を置いて生活することにしました。それが彼にはよくなかったのかもしれません。精神的におかしくなって、私たちに嫌がらせをするようになりました。もちろん、養育費も送ってきません。離婚するまでに2年もかかりました。

父がいない実家では私が大黒柱なので、地元企業の正社員として再就職しました。それから15年間以上、広報担当者として働いていたんです。東京で身につけた編集やライティングも生かせる仕事なのでやりがいはあったのですが、ワンマン社長の意向が変わってチームごと首をきられてしまいました。

大人になった娘とじっくり向き合える2人暮らし。この先、こんな時間は持てません

大学に通っている娘は奨学金をもらっています。でも、年間160万円ほどの学費と家賃は払ってあげなければなりません。私と一緒に住めば生活費は節約できるので、共同生活を提案したとき、娘は「はあ? 何言っているの?」と驚いていました。でも今は、大人になった娘との生活を楽しんでいます。朝、仕事に行く前に洗濯機のスイッチを押せば娘が干しておいてくれますし、「掃除機をかけてください」とLINEをすれば、「了解」と返してくれる。料理はどちらも作ります。

以前はガツガツと働いていたし、実家の母もいたので、娘とはじっくり向き合っていませんでした。娘は大学を卒業して就職したらすぐにでもひとり暮らしを再開したいそうなので、この先はこんな時間は持てないとも思っています。

東京での再就職はとても大変でした。失業保険をもらいながら就職活動をしたのですが、80社以上から落とされて…。希望の職種に近い仕事に就くためには、まずは派遣社員として入るしかありませんでした。同僚の女性たちは年下ばかりですが、業務を教えてもらっています。若い頃と違って物覚えが悪くなってしまい、不甲斐なく感じつつ頑張っているところです。

弱い自分も含めて見せられる恋人は欲しい。でも、結婚はもういいです

コロナで気軽に声をかけづらい時期に東京生活を始めてしまいましたが、住み始めた町のヨガ教室などでいい人たちと出会いました。町おこしのサイトで記事を書かせてもらったりもしています。

恋愛はお休み中です。離婚した後、同じくバツイチの男性と地元で付き合っていました。でも、私はどこかクセがある人を好きになりがちなのでしょう。その人も自分大好きな人で、肝心なところで私や娘との間に線引きをするのです。それが悔しくて別れました。
娘の卒業を見届けたら、また恋愛をしたくなるかもしれません。この年齢でそんなチャンスがあるのかはわかりませんが、弱い自分も含めて見せられるような頼れる人がそばにいてくれたらいいな、とは思います。

でも、結婚はもういいかな。一緒に住むのは大変だからです。前の結婚でもいい思い出はあまりありません。最終的には「この人と同じお墓に入りたくない!」と強く思ってしまいました。結婚は子どもがいるからこそ成り立つものなのかもしれません。私は子どもがいても離婚してしまいましたけど。

大好きなパンを焼くことがライフワークならぬ「ライクワーク」の井上さん。自作のくるみとクランベリーのカンパーニュです。(本人提供)

***大宮より井上さんへ***

自立しつつも好奇心の赴くままに行動する生き方に定年や引退はありません

井上さんが作ったカンパーニュ、とてもおいしそうですね! 僕は堅めで味のある素朴なパンが好きなのです。オリーブオイルか無塩バターだけでむしゃむしゃ食べたい…。

派遣社員として組織で働いて生活費を稼ぎながら、本当にやりたい仕事であるライターとしても活動し、人に教えるほどの腕前であるパン焼きで生活を潤す――。井上さんはそれぞれを「ライスワーク」「ライフワーク」「ライクワーク」に分けて考えているようですが、長く続けていると相乗効果が生まれてくる気がします。

僕もフリーライターとしていろんな人や会社を取材しています。ときどき強く思うのは、「観察者ではなく当事者になりたい」ということです。同僚と協力したり反発したりしながら何かを生み出す喜びと悲しみを味わいたいし、モノづくりの苦労を肌で知っている当人の言葉にはかなわないと思うこともあります。井上さんならば「派遣社員は見た」的な立場でも書けるし、パンについて本一冊分ぐらいは語れるのではないでしょうか。
パンの「本職」ではないからこその視点もあるはずです。伝統の中に革新的な工夫を入れられるかもしれません。また、井上さんが派遣社員として働いている職場でもライター業やパン作りのスキルはいずれ生かせると思います。

この道一筋の専門家として名を成すのもひとつの生き方です。でも、まったく違う分野をそれぞれ真剣に取り組んでいれば、専門家とはまた異なる価値が生み出せる気がします。自立しつつも好奇心の赴くままに行動しているので予期せぬ出会いも増えるでしょう。
そういう人には定年や引退はありません。派遣先での業務をなかなか覚えられずに不甲斐ないと嘆いている井上さん。その真面目さがあれば、娘さんが巣立った後の生活も充実したものであり続けるはずです。

大宮冬洋さんによるインタビュー連載「私、ひとりでいてもイイですか?」は毎週日曜21時更新! 次回は6月27日(日)21時です。お楽しみに!

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