朝食や昼食、時にはおやつタイムに…手軽に食べられるパンは毎日の食事に欠かせないという人も多いのではないでしょうか。一方でパンは「太りやすい!」「ダイエット中には不向き」ともよく言われる食品です。今回は、日本食品標準成分表食品成分表2020年版(八訂)(以下、食品成分表)を使って、パンの種類別に栄養素を比較してみました。いつものパンをよりヘルシーに食べる方法も合わせてご紹介します。
Contents 目次
20種のパンの栄養価一覧
食品成分表において「パン」と分類される食材は20種。(※菓子パンや総菜パンを除く。)食パンはトーストしたものやパンの耳部分だけなどかなり細かく分類されています。
※一覧ではすべて100gあたりの栄養価です。
※100gの目安量は8枚切り食パン約2枚分です。
5大栄養素および食物繊維量を比較してみると、それぞれのパンの特長が見えてきました。栄養価別にパンの栄養を確認してみましょう。
<エネルギー(カロリー)>
想像通りでしょうか?
クロワッサン(レギュラータイプ406kcal・リッチタイプ438 kcal)はほかのパンと比べてエネルギーが高め、食パンと比べると約2倍です。バターなどの油脂類をより多く含んだリッチタイプは、その名の通りさらにエネルギーが高くなります。なかにはチョコレートが入っていたり、表面に砂糖がまぶしていたりするものもあるので、食べ過ぎには注意が必要ですね。とはいえ、クロワッサンはほかのパンと比べて軽く、1個当たりの重量は少なめ。1個当たり40~50gですので、約200 kcal /個と覚えておくとよいでしょう。
またロールパン(309 kcal)も生地にバターや卵を使うため、エネルギーは少し高くなります。ロールパンは1個当たり30gですので、約100 kcal /個です。
<たんぱく質>
たんぱく質量はパンの種類によってそれほど差がありません。例えば食パン6枚切りを1枚食べた場合は5.3g、これはたまご1個(7.1g)にも満たないたんぱく質量です。パンとコーヒーだけ、パンにジャムを塗るだけ…とパンだけで食事を済ませてしまうこともあるでしょう。その場合1日のたんぱく質の目標量は約84g※ですので、約6%しかとることができません。たまごやツナ、牛乳などを添えてたんぱく質量をアップさせたいですね。
※30~49歳女性、身体活動レベルⅡにおけるたんぱく質の目標量の平均値
<脂質>
エネルギー同様、クロワッサン(レギュラータイプ20.4g・リッチタイプ26.8g)に脂質が多く含まれていることがわかります。くるみパン(12.6g)もほかのパンと比べて比較的数値が高くなりますが、これはくるみ由来の脂質であると考えられます。くるみには必須脂肪酸であるn-3系脂肪酸が多く含まれ、青魚などのDHAやEPAと同様に積極的にとりたい栄養素のひとつです。一方でフランスパン(1.3g)やベーグル(2.0g)は脂質が低め。バターやベーコンなどの脂質の多い食材を合わせたいときは、これらを選ぶとバランスが整いやすくなります。
<炭水化物/食物繊維>
炭水化物はたんぱく質同様、パンの種類によって大きな差はありません。一方で食物繊維はライ麦パン(5.6g)と全粒粉パン(4.5g)が群を抜いて高い数値です。
ライ麦パン
ドイツを代表するパンのひとつで、ロシアや北欧などの比較的寒冷な地域でよく食べられています。ライ麦には食物繊維のほか、鉄やマグネシウムなどのミネラル類を多く含みます。ライ麦の割合が高くなるほどしっとりと重たくなり、独特の酸味を持つパンになります。
食品成分表のライ麦パンは小麦粉とライ麦を1:1の割合で作られたものを分析しています。
全粒粉パン
全粒粉パンは穀物の外皮や胚芽などをとり除かず、そのまま粉砕した全粒紛を使ったパンです。全粒粉パンに使われる穀物には、小麦、ライ麦、玄米などさまざまな種類がありますが、一般的には小麦を使っている場合が多く、食品成分表の全粒粉パンも小麦を使用し、小麦粉と全粒粉を1:1の割合で作られたものを分析しています。全粒粉は胚芽や外皮も含むため、食物繊維のほか、鉄やマグネシウム、ビタミンB群などがほかのパンと比べて豊富に含まれています。香ばしい香りが強く、普通の食パンなどに比べてかみごたえがあるのが特徴です。
ライ麦パンと全粒粉パン、どちらも食物繊維が豊富でしっかりとした食べごたえがあるため、食べ過ぎ防止や便秘改善に効果が期待できると言えるでしょう。
2種の栄養価を比べてみても、どちらも大きな差がないのでお好みでお選びいただいて問題ありません。ひとつ気をつけたいのが配合量です。「ライ麦入りパン」「全粒粉入りパン」などと販売されているもののなかには、それぞれが少量しか入っていない可能性もあります。きちんと効果を得るには、ライ麦粉や全粒粉の割合が50%であることを目安に配合量を確認するようにしましょう。
<食塩相当量>
ごはんは塩分量が0gに対して、パンは100g当たり1g以上の塩分が含まれています。成人女性の1日の塩分の目標量は6.5g未満です。合わせるおかずをいくら調整したとしても、1食分の塩分量がオーバーしてしまいがち…。じつは栄養士のなかではパンがメインの食事は“栄養士泣かせの献立”とも言われるほど、塩分量を抑えるのがとてもむずかしいのです。パンそのものに塩分が多く含まれているということを忘れず前後の食事で調整するようにしましょう。
ダイエット中でもヘルシーにパンを食べる3つのポイント
エネルギーが高い、塩分も高い…とここまで読み進めると、やはりパンはダイエット中には不向きと感じてしまうでしょうか。しかしこの世に食べてはいけないものはありません!! おいしいパンをガマンするのは心の健康にもよくないですね。そこで、パンをよりヘルシーに、ポジティブな気持ちで食べられるようなポイントを3つご紹介します。
<1>菓子パン・総菜パンは控える
揚げパンやメロンパン、クリームパンなど…一覧以外の調理済みパンは別物ととらえてください。あくまで嗜好品であり食事としては不向きです。なるべくシンプルな材料で作られているものを選びましょう。一覧表で見たクロワッサンは菓子パンに含んでもよいほど、要注意です!
<2>定食を意識する
何事も、“○○だけ”という食事は栄養バランスが崩れやすいです。パン食の際もぜひ定食を意識してみてください。
主食:パン
主菜:オムレツ
副菜:サラダ
汁もの:ミネストローネ
このようなイメージで、おかずや汁物も用意すると食事の満足度もアップして、パンの食べ過ぎを防ぐことができます。
<3>ライ麦パン/全粒粉パンを選ぶ
全体のバランスを意識し、より栄養価の高いパンを選べば完璧です! 食物繊維たっぷりのライ麦パンや全粒粉パンなら、食事全体の栄養価を底上げしてくれます。かみごたえもあるので、自然と咀嚼(そしゃく)回数も増えるでしょう。
いかがでしたか?
ダイエット中だからといってガマンのし過ぎは禁物です。それぞれのパンの特長を比較し、工夫をしながら毎日の食事を楽しんでくださいね。
<参考>
・日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
日本人の食事摂取基準(2020年版) 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
栄養価計算エクセル「楽らく栄養ちゃん 2020(八訂)」
https://watashirashisa.work/text