“1日分の野菜がとれる!”そんなキャッチフレーズを耳にしたことがある人は多いはず。そもそも1日分の野菜とはどのくらいなの? どんな野菜でもいいの? そんな疑問を「食品成分表」のデータを用いながら考えていきたいと思います。みなさん、1日分の野菜摂取量は足りていますか?
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1日分の目標量は350g以上!
350gというのは厚生労働省が国民の健康づくりのために掲げている「健康日本21」において定められた数値です。カリウム、食物繊維、抗酸化ビタミン(ビタミンA/C/E)など、野菜から摂取できる主な栄養素において、これらの必要量を満たすための目標値。「健康日本21」では、「野菜350~400gの摂取が必要と推定されることから、平均350g以上を目標とする」と記載されています。350gではなく、350g“以上“としている点は意外に見落とされているのかもしれません。
野菜350gってどのくらい?
350gはどのくらいなのでしょうか? 実際に350gの野菜を測ってみました。
トマト(1/2個):100g
にんじん(1/3本):50g
きゅうり(1/2本):50g
なす(1本):80g
キャベツ(約1枚):70g
いかがですか? ふだんの食事を振り返りながらぜひ確認してみてください。「簡単にクリアできそう!」「ちょっとむずかしいかも…」など感じ方はそれぞれではないでしょうか。これは1日の目標量なので、1食分では1/3、約120g以上です。
野菜350gで得られる栄養は?
野菜といっても種類は様々、どんな野菜でも350gをとれば栄養は満たされるものなのでしょうか? 緑黄色野菜、淡色野菜を各5種、合わせて10種の野菜をそれぞれ単独で350g食べた場合の栄養価を一覧にしてみました。
割合は1日分の成人女性に必要な量の充足率を表しています。
食物繊維総量
:18g以上/日(18~64歳女性 目標量)
食物繊維は整腸効果や血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール値の低下など、多くの健康効果が明らかになっています。
野菜の種類によって充足率に幅はありますが、野菜だけで目標量を達成するには少々むずかしそうです。とくに水分量の多いきゅうりやトマト、重量の軽い小松菜やキャベツなどの葉物野菜の食物繊維はそれほど多くありません。ごぼうやブロッコリーなど、なかには食物繊維を多く含む野菜もありますが、果物やきのこ、海藻、豆類など、ほかの植物性食品からの摂取も大切です。また効率的に食物繊維をとるには、玄米ごはんや雑穀ごはん、全粒粉パンなど、主食となる穀類を見直してみるのがおすすめです。
カリウム
:2600㎎以上/日(成人女性 目標量)
カリウムはミネラルの一種。ナトリウムを排出する作用があるため、とくに塩分の過剰が気になる方は積極的にとりたい栄養素です。
今回の10種で見ると緑黄色野菜に多く含まれている傾向にありますが、カリウムも食物繊維と同様に、野菜だけではなく、果物やいも類、さらには肉や魚の動物性食品にまで幅広く含まれています。カリウムは水溶性のため水に溶けやすい栄養素です。サラダなどで生のまま食べたり、みそ汁やスープなど煮汁ごと食べられる料理を意識するのがよいでしょう。
抗酸化ビタミン
ビタミンA:700μg/日
ビタミンC:100㎎/日
ビタミンE:5.5㎎/日
(30~49歳女性 A/C:推奨量 E:目安量)
体の機能を正常に保つために働くビタミン類、なかでもビタミンA/C/E は抗酸化力があり、免疫機能の低下などを引き起こす原因となる活性酸素の働きを抑える作用を持ちます。いずれも緑黄色野菜に多く含まれていますね。
ビタミンAはにんじん(360%)、ビタミンCはブロッコリー(490%)、ビタミンEはかぼちゃ(249%)など、野菜によってそれぞれ秀でた栄養素を持つことがわかります。淡色野菜の中ではキャベツ(133%)にビタミンCが豊富に含まれています。これらのビタミンはいっしょにとることでより効果が高まります。1種類だけでなく、さまざまな種類の野菜をまんべんなくとり入れるのがよいでしょう。
350gにこだわる必要はない!? 数値ではなく、バランスよく食べよう
このようにそれぞれの栄養価を調べてみると、「これだけ食べていればよい」という魔法の野菜はなさそうです。
また、350gはあくまで目標値。まずは自分がどのくらい野菜を食べているのかを確認するための目安として利用する程度でよいのではないでしょうか。
現在、日本人の野菜摂取量の平均値は281g(/日)。目標値まで約70gが不足しています。70gの野菜は、おひたしやサラダなどの小鉢1皿に相当します。
もし、350g以上の摂取をむずかしく感じる人は、3食のうちでどれか1食、「小鉢1皿」を加えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。外食では「野菜トッピング」を選んでみましょう。
一方で、ふだんから350g以上の野菜がとれている人は、野菜の種類を意識してみてください。せん切りキャベツにトマトを添える、きんぴらごぼうににんじんを加える、なすのみそ汁に小松菜を…、とくに色の濃い緑黄色野菜をプラスしてあげると目標値に近づけられるでしょう。
健康な体は毎日の積み重ね。まずは「今日は野菜を食べたかな?」と意識するところからはじめてみてくださいね。
<参考>
健康日本21(栄養・食生活)3.現状と目標,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b1.html#A13
健康日本 21(第三次)推進のための説明資料 p29.30,厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/001102731.pdf
・日本食品標準成分表(八訂)増補2023年,文部科学省
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_00001.html