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歯ブラシと口もとの画像

新しい生活様式のひとつとしてすっかり定着したマスク生活。顔の下半分を覆うマスクは多少の肌や口まわりのトラブルも隠してくれてラクな面もありますが、じつはマスクに隠されていることによって発生する新たなトラブルも。新型コロナウイルスの影響で変化した口腔内の環境や、アップデートされた口腔ケアの常識について、歯科医の宮本日出先生に伺いました。


マスク生活によって“口呼吸”する人が倍増

マスクをする女性画像

すっかり生活のパートナーになり、着けているのが当たり前となったマスク。多少メイクをサボっても気づかれにくいし、慣れれば案外快適です。しかし、知らないうちに私たちの健康に悪影響を及ぼしている可能性もあるのです。

「新型コロナウイルス感染症の拡大対策として、2020年5月に熊本県内で行ったマスクの実態調査の結果、口呼吸になった人が増えていることがわかりました。特に女性に顕著な傾向で、口呼吸をする人は、マスクをしていないときは10%だったのに比べて、マスクを装着したことにより25%と、2.5倍に増えているのです。

マスクをすると鼻呼吸では苦しくなるので、口で息をするようになることがあります。それが習慣化してしまうケースが少なくありません。本来、人は鼻で呼吸をしています。すると鼻毛や粘膜がフィルターの役目を果たし、ウイルスや細菌、ホコリなど悪いものを除去してくれます。また鼻腔内で空気は適度に加湿・加温されて、肺へ空気を送ります。

これが口呼吸になると、口の中の粘膜が乾燥することで、唾液の量が減ります。唾液の量が減ると、口内炎になりやすくなりますし、風邪やインフルエンザを始めとする感染症にかかりやすくなります。口の中を唾液が循環しなくなり、細菌が増殖するため、虫歯、歯周病が悪化します。口臭の原因となる菌も増え、口臭が強くなります」(宮本先生)

そのほかにも口を閉じないため、周囲の筋肉が衰えて美容にも悪いそう。
まさに百害あって一利なしの口呼吸なのです。

腸と口の中はつながっている? 腸と唾液腺の密な関係

消化管のイラスト画像

「口呼吸によって唾液が減少するということは、先ほどお話しした通りです。唾液は、口腔内の健康には欠かせません。唾液は99.5%が水分で、残りの0.5%に、多くの機能があります。

特に唾液に含まれるIgA(免疫グロブリンA)は粘膜の感染に対する作用の中心的存在であり、免疫のなかで真っ先に病原体に反応する“感染予防の砦”です。唾液の抗菌成分の約7割を占めるIgAが、ウイルスや細菌の侵入をブロックしてくれるのです。ところが口の中が乾燥して唾液が減ると、それに伴ってIgAも少なくなり、感染しやすい状態になってしまいます」(宮本先生)

唾液に含まれるIgA量は腸内環境にも左右されるそう。

「腸と唾液腺は一見、関係なさそうですが、腸管免疫が高まると唾液中のIgAが増えることがわかっており、この関係を“腸‐唾液腺相関”と呼んでいます。たとえばヨーグルト(乳酸菌1073株)を継続して摂取すると、唾液中のIgAが増加しますので、コロナ禍ではぜひ食べてください。

そのほかにも、歯みがき、舌みがき、よくかむこと、水分摂取、食物繊維・発酵食品の摂取、軽い運動などで、唾液に含まれるIgAの濃度が増える ので、とり組むことをおすすめします。また、こまめなうがいは、口の中の汚れを洗い流すのに効果的なので、積極的に行うようにしましょう。

そして忘れてはいけないのが、虫歯・歯周病対策として行われる、歯科医院での定期的な検診と口腔ケアです」

歯周病対策が新型コロナウイルス感染症対策にもなる理由

りんご、メジャーなどの画像

歯周病は、2001年ギネス世界記録で、世界で最も感染者の多い病気に認定された病気です。「世界を見渡しても、この病気にかかっていない人は、数えるほどしかいない」ほど蔓(まん)延しています。歯周病は歯そのものではなく、歯のまわりの組織(歯ぐき、セメント質、歯槽骨、歯根膜)を破壊する感染症です

「自粛生活の今だからこそ歯周病管理がとても大切」と先生は言います。

「歯周病は約30種類ほどの歯周病菌が原因となって起こります。歯周病菌を日常的に減らすには、毎食後の歯ブラシなどのセルフケアが大切ですが、食事内容とも深い関係があります。たとえばかむ回数が増えれば唾液量が増えます。すると口の中が浄化され、殺菌効果が上がります。歯ごたえのあるものをよくかんで食べれば、歯周病対策ひいては新型コロナウイルス感染症対策につながります。

歯ごたえのよい食材は、繊維質を豊富に含んでいることが多く、歯の間にはさまっても歯ブラシなどでとりやすいという特徴があります。反対に、ほとんどかむ必要がないような加工食品やファストフードは、歯の表面に付着しやすく、歯周病菌の温床になりやすい傾向があります」

歯周病はメタボへと続く道

「歯周病は生活習慣病(メタボリックシンドローム)の初期疾患としても知られています。歯周病は生活習慣の乱れから多く発症、重篤化する傾向にあることから、内臓に脂肪がたまることにも影響を及ぼしています。さらに、糖尿病や動脈硬化など多くの疾患との関連も知られています。

つまり歯周病になると、肥満になりやすくなるのです。逆に、歯周病菌を減らすのに効果的な、歯ごたえのある食べものは、咀嚼音も比例して大きい傾向がありますが、咀嚼音が大きい食べものは満腹を感じやすい ため、食べる量が少なくてすみます。歯ごたえのある食事は、歯周病と肥満の両方に効果的であると言えるのです。

新型コロナウイルスによる感染症を防ぐためにも、コロナ太りを防ぐためにも、歯周病菌を減らすためにも、歯ごたえのある食事としっかりとした口腔ケアを行っていきましょう」

次回は、自分で口腔ケアをするために、どんなグッズを選んだらよいのか、具体的に教えていただきます。

取材・文/内藤真左子

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宮本 日出 (みやもと ひずる)

宮本 日出 (みやもと ひずる)

歯科医師、歯学博士、幸町歯科口腔外科医院・院長。
日本顎関節学会・代議員・指導医・専門医、厚生労働省認定歯科医師卒後臨床研修指導医教官、その他、大学・学校の教官職等多数。国内外に160篇以上の論文を発表、複数のメディアにも登場している。

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