最近、20~40代の女性にストレス性のめまいを訴える人が増えています。ある日突然、片方の耳が聞こえなくなる「突発性難聴」でも、めまいが起こることがあります。めまい症状が出る疾患についてシリーズで紹介します。今回は、めまいを伴う突発性難聴について、横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長で、25万人のめまい症状を改善してきた新井基洋先生にうかがいました。
Contents 目次
このシリーズでは、めまい症状が出る疾患について紹介していきます。
(1)ストレス性のめまいって?
(2)ストレス性のめまいのセルフケア
(3)PPPD
(4)メニエール病
(5)めまいを伴う突発難聴 ←今回はココ
(6)前庭性片頭痛
(7)良性発作性頭位めまい症
あなたは大丈夫? めまいを伴う突発性難聴のチェックテストを行ってみましょう。
【チェックテスト】
□ある日突然、めまいが起こった
□めまいは今回のみで、1回しかない
□急に耳鳴りや耳のつまりを感じる
□急に片方の耳の聞こえが悪くなった
□大きなストレスや疲労を感じることがあった
いかがでしたか? すべての項目に当てはまれば、めまいを伴う突発性難聴かもしれません。
芸能人にも多い突発性難聴。めまいを伴うと治りが悪い
突発性難聴は、KinKi Kidsの堂本剛さんや浜崎あゆみさんらが公表しているように芸能人にも多く、名前だけは知っているという人も多いことでしょう。どのような症状が出るのでしょうか。
「突発性難聴は、ある日突然、片方の耳が聞こえなくなる疾患です。少しずつ聞こえが悪くなるわけではなく、前ぶれもなく症状が出ます」と新井先生。
片方の耳が聞こえなくても、もう片方の耳が聞こえを補おうとするため、なかなか気づかないこともあります。会社で電話をとって、受話器に耳を当てたら何も聞こえず、それで気づいたという人もいます。
この突発性難聴で、めまいを伴うことがあります。
「激しい回転性のめまいが1回だけ起こるのが特徴です。めまいは、聴力の低下、耳のつまり、耳鳴りなどとほぼ同時に起こることが多いようです」
突発性難聴を引き起こすのは、耳の血流障害です。
「耳の中へ血液を送っている血管は、髪の毛1本ほどの細さです。何らかの原因でこの血管の血流が滞り、聞こえに関わる『蝸牛(かぎゅう)』という器官が影響を受けると、聴力が落ちてしまうのです。その引き金となるのは、過労、加齢、動脈硬化などが挙げられますが、大きなストレスも原因です。突発性難聴の中でめまいを伴うケースは、血流障害で蝸牛だけではなく耳全体が影響を受けるからで、そのため治りに関しても、めまいを伴わない場合よりも聴力改善が悪くなります」
厚生労働省の報告によると、突発性難聴の3分の1の人は治りますが、3分の2の人は後遺症が残り、そのまま聴力が回復しないことがあります。後遺症は、めまいやふらつき、耳鳴りと難聴、音が割れて聞こえたりすることだそうです。
聞こえが悪いことに気づいたら、すぐに耳鼻科にかかりましょう。
「発症から、遅くとも2週間以内には医師の診察を受けてください。突発性難聴は、耳の血流が悪くなっている状態で、そのまま放置すると内耳の細胞が血流不足によってどんどん死んでしまい、それだけ聴力に影響が出ます。聞こえが悪くなってから3~4週間経つと、聴力は戻りにくくなります。早期にステロイドを中心とした標準治療を始めることが重要です」
セルフケアは、病院で治療を受けたあとに!
治療は、耳鼻科での薬物治療がファーストチョイスです。突発性難聴の場合は、後遺症でめまいやふらつきが残ったときに、セルフケアを行いましょう。
セルフケアでは、小脳を鍛え、体のバランス機能を強化しますめまい改善トレーニングです。
やり方は、視線や頭、首を動かして、目、耳をくり返し刺激します。
速いヨコ
(1)両腕を伸ばして、肩幅よりやや広めに開く。両手の左右の高さをそろえて親指を立てる。
(2)頭を固定して、目だけを動かして右の親指と左の親指を交互に見る。
※1秒間に1回見るリズムで、「1」「2」と声を出して回数を数えましょう。合計20回です。
ゆっくりヨコ
(1)体と顔を正面に向けて、左手の人さし指でアゴを押さえ、頭が動かないように固定する。右腕を正面にまっすぐに伸ばし、手を握って親指を立てる。
(2)左手の人さし指を固定し、右腕のひじを伸ばしたまま親指を右方向に30°移動させながら、親指の爪の動きを目で追う。頭を動かさないように注意する。
(3)右の親指を、正面を通って左方向に30°移動させながら、(2)と同様に目で追う。
※(2)~(3)を10往復行う。
※親指を移動させるときに、声を出して「1」「2」と回数を数えましょう。合計20回です。
振り返る
(1)体と顔を正面に向けて右腕を伸ばし、手を握って親指を立てる。
(2)親指の爪を見ながら、頭だけを右に30°ひねる。
(3)同様に、左に30°ひねる。
※(2)~(3)を10往復行う。
※頭をひねるときに、声を出して「1」「2」と回数を数えよう。合計20回です。
※クラッとしたら効いている証拠です。
上下
(1)体と顔を正面に向けて右腕を伸ばし、手を握って親指を横に突き出す。
(2)手は動かさず、目線を親指の爪に固定したまま、頭を30°上に向ける。
(3)同様に、アゴをしっかり引いて頭を30°下に向ける。
※(2)~(3)を10往復行う。
※頭をひねるときに、声を出して「1」「2」と回数を数えましょう。合計20回です。
めまいを伴う突発性難聴を改善するには、ストレスの原因を解消していくことも大切です。
「グルグル、フワフワ、フラフラ…。20~40代の女性に増えている、ストレス性のめまいってどんなもの? めまいの専門医が解説!」では、「ストレス性のめまい」について総合的に解説しています。
取材・文/海老根祐子 イラスト/クロカワユカリ