1日に何千回と行われる自分自身との会話。人生でいちばん会話をする相手は誰よりも自分自身です。この“脳内トーク”をじょうずに活かすことで、メンタル、セルフコントロール、集中力、ダイエットなども思いのまま…!? 今回は、脳科学者の西 剛志さんの著書『世界一やさしい 自分を変える方法』より、メンタルと脳内トークの関係性についてお伝えします。
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マイナスの言葉が出てくるときは
仕事やプライベートで大変なとき「疲れた」「もう嫌だ」「しんどい」「大変だ」と、いわゆるマイナスの言葉が出てくることがあります。そんなときは「でも」という2文字を使う。これだけで脳は最初の言葉と反対の言葉を生み出そうとするため、プラスの側面を見つけようとします。
「疲れた。でも、がんばった」
「疲れた。でも、充実してた」
「疲れた。でも、よくここまでやった」
「“でも”を使うだけで、プラスの言葉がどんどん出てきます。使い続けることで、前向きな考え方に脳がうながされていきます。どんな分野でも、成果を出している人ほど、このようなシンプルな脳内トークを使っています。ちなみに、声に出しても心のなかで言っても、脳内トークの効果は変わらないこともわかっています」(西さん)
ポジティブ思考の限界
前回、困難を乗り越えようとするとき脳内トークが増えるということをお伝えしましたが、脳内トークはポジティブであればあるほどいいというわけではありません。「私は絶対にできる!」「これを乗り越えれば、もっとレベルアップできるはずだ!」というポジティブな脳内トークが、必ずしもベストなパフォーマンスを生むわけではないということがわかっています。
あるダイエットの実験では以下のようなことが示されています。
【実験】
・肥満の女性を集めて、1年間の減量プログラムに参加してもらう。
・目標をヒアリングして、「実際の食事の場面でどのようにふるまうか」を想像してもらい、次のようなグループに分けた。
1.目標は前向きで、「私は誘惑にも負けない」と思うグループ
2.目標は前向きだが、「誘惑に負けて食べてしまう」と思うグループ
【結果】
1年後にもっとも減量効果があったのは、2の目標+「誘惑に負けて食べてしまう」と思うグループだった。
「これはネガティブな思考が必ずしも悪い結果をもたらすわけでないということ、そしてポジティブ思考で考えるだけではうまくいかないことが証明されています。どんな分野でも、成功している人にインタビューすると、夢ばかりイメージしている楽観主義の人は皆無です。彼らは最高のイメージだけでなく、最悪のことも同時にイメージしています」
バランスのいい脳内トークで良好なメンタルをつくる
自分の能力を過剰にほめてしまうなど、過剰なポジティブな脳内トークは成長を止めてしまいますが、「正しいポジティブ脳内トーク」というものがあります。
それは言葉をつぶやいた瞬間に、気持ちが高まったり、よい感覚に変化したりするもの。
「ヤッター!」「ありがとう!」「うれしい!」「最高!」「楽しい!」「気持ちいい!」
「自分の能力を過剰に評価してしまう言葉は、よい影響がありませんが、純粋に自分の気持ちを高める脳内トークは、安定して能力を発揮しやすくなります」
反対に、ネガティブな脳内トークについても、前述のように決して悪いものではありませんが、マイナスの部分にフォーカスしすぎて、必要以上にやる気を下げてしまうようなら要注意。
そんなときはこのように対処しましょう。
「やる気がない」→「俺、やる気がないね」
「自信がない」→「あなた、自信がないよ」
「イライラする」→「たろうは、イライラしているよ」
「悲しい」→「はなこは、悲しい」
「不安を感じる」→「さおりんは、不安なんだね」
「このように気持ちによりそった脳内トークをすると、どんなネガティブな言葉を使っても、心拍数が低下して気持ちが整うことがわかっています。特に主語を第3者にすると、より気持ちが落ち着き、集中力やセルフコントロール力まで高まる効果が期待できます」
脳内トークは自分と話す技術。脳内トークによって想像する以上に脳に変化が起きているといいます。他者との会話のように自分との会話も磨いていくとよいですね。
文/庄司真紀
参考書籍/
『世界一やさしい 自分を変える方法』(アスコム)
著者/西 剛志
東京工業大学大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人たちの脳科学的なノウハウや、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めてこれまで1万人以上に講演会を提供。エビデンスに基づいた研修、商品開発サービスなども全国に展開。テレビやメディアなどにも多数出演。著書シリーズは海外でも出版され『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)をはじめとして累計31万部を突破。