一般社団法人日本フェムテック協会(以下、日本フェムテック協会)が、フェムテックやフェムテラシーをテーマにした「ランチタイムウェビナー」を開催中。今回は、そのアーカイブの中から、2025年6月に配信された「確かな情報はあなたの健康、命を守る~女性の幸福な人生に必要なリテラシーとは~」をピックアップ。日本フェムテック協会理事で国家資格キャリアコンサルタントの市川美和さんを進行役に、「教育とメディア」のコモンズ・キュレーター(現、教育とメディアのコモンズ・ラボ代表)で国家資格キャリアコンサルタントの尾高泉さんにお話ししていただきます。
Contents 目次
「教育とメディア」のコモンズ・キュレーター尾高泉さんの取り組み

※この記事で使われている資料の無断転載はご遠慮ください。
市川さん:本日のテーマは「情報」です。情報は自分を守る武器にもなれば、危険にさらすものにもなります。ゲストは、元日本新聞博物館館長で、「教育とメディア」のコモンズ・キュレーター(配信時)、現在は教育とメディアのコモンズ・ラボ代表としてご活躍の尾高泉さんです。
尾高さん:よろしくお願いします。私は男女雇用機会均等法の元年世代として日本新聞協会に入り、38年間メディアを支える仕事をしてきました。2025年の夏に定年退職し、現在は新聞社のアドバイザーや教育現場や自治体での講演などを通じて、あらゆる世代にメディアリテラシーの大切さを伝える活動をしています。
市川さん:私たちフェムテック協会もヘルスリテラシーは重要視していますので、大変参考になる大切なものだと思います。新聞博物館時代には、非常に話題になった企画展もプロデュースされていましたね。この企画者としての想いを伺いたいと思います。

尾高さん:はい。とくに2023年に開催した「多様性 メディアが変えたもの、メディアを変えたもの」では、明治から現代にかけてメディアがどう多様性と向き合ってきたかを紹介しました。また、コロナ禍での情報の混乱を振り返る企画展も行いましたが、この時期はマスメディアの無力感や、SNS情報による社会の混乱が顕著になった時期でもありました。
市川さん:メディアの進化と多様性。多様性というところでは女性が切り離せないところだと思います。そんな中で、フェムテックの文脈では、産経新聞社の「メトロポリターナ」の取り組みも紹介されたとか。
尾高さん:編集長の日下さんの活動は、同業他社にもフェムケアの輪を広げる大きな力になりました。多様性の企画展でも彼女の活動を紹介し、大きな反響をいただきました。
市川さん:私たちの後輩の活躍を応援したいと思います。
それから「不確かな情報のリアルな怖さ」についても事前のお打ち合わせで重要性を実感しました。世の中には役立つ情報もあふれている中、不確かな情報も流れてくる、それを排除すると友達を失うことにもつながると思います。その辺りを教えてください。
情報は「生きるための基盤」

尾高さん:ウワサ話は人間関係を維持するのにすごく大事。だけどSNSの情報の流れ方の怖さを考えると、放置できないこともある。どうしてそのような情報流通構造になっているのか皆さんに知ってもらいたいと思っています。私が最も強調したいのは、「情報は水や食料と同じように、生きるための基盤である」ということです。 情報は私たちの「食べもの」のようなものであり、確かな情報がないと命に関わることもあります。
市川さん:コロナ禍や災害時、その怖さを実感しました。
尾高さん:コロナ禍では、根拠のない偽・誤情報や陰謀論によってワクチン情報が混乱したり、誹謗中傷で命を落とす方までいました。東大の鳥海不二夫教授らの分析によれば、こうした偽情報の元は、じつは非常にわずかなアカウントから始まっていることが分かっています。
トイレットペーパーのデマ騒動は、1件のデマの投稿から2日間で32万件、それを否定する善意の投稿があふれたのに、人々はデマに沿った行動をしました。また、兵庫県の県知事選挙のときにも、亡くなった元県議に対する批判的な投稿は、たった13件の投稿から11万件以上の拡散を招きました。
「フィルターバブル」と「エコーチェンバー」
尾高さん:現代の情報環境は、SNSの情報にだけふれていると、アルゴリズムによって「自分が見たい情報だけが届く」フィルターバブルの中にあります。自分が信じた情報を多くの人が支持していると錯覚する「エコーチェンバー」現象により、異なる意見にふれる機会がなくなります。
私が活動しているのはメディアリテラシーの領域ですが、皆さん一人ひとりがメディアリテラシーを持つことがとても大事。さらに、人々がニュースから離れているのも世界的な傾向になっています。とくに日本は、「SNSなどでは自分に近い意見や考え方の情報が表示されやすいことを認識している」人の割合が4割弱と、米国、ドイツ、中国の半分しかいないということが総務省の調査で示されています。
市川さん:とくに私たちの世代は、こうした教育を受けてきていないですよね。
尾高さん:その通りです。今の子どもたちは学校でメディアリテラシーを学び始めていますが、50~60代の層は、フィルターバブルの構造への認識が低い。偽・誤情報のジャンルで最も多いのは「医療・健康」で、全体の63%を占めています(ICTリテラシー、偽・誤情報の拡散に関する「利用者の認識に関する実態把握」、総務省、2025.5.13)。これはフェムテックの領域と非常に近く、私たちが最も注意しなければならない部分です。
女性のキャリアと「情報格差」

市川さん:事前のお打ち合わせでは、女性こそ情報格差を意識すべきだというお話がありましたが、非常に共感しました。
尾高さん:女性は、所得格差から情報弱者になりやすい。ぜひ皆さんに知ってほしいのが、「ケアの倫理」です。『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』(カトリーン・キラス=マルサル)という本をご存じですか。経済学の父アダム・スミスは、生涯独身で、その衣食住の世話は母親がしました。転勤先までついて行ったそうです。私たちはケアをしあって、相互依存しながら暮らしていることが、ようやく知られるようになってきました。働く女性は家事・育児・介護のケア労働も担っている人が多い。女性が担ってきたケア労働は、数字にならないために「影」に隠されがちでした。こうした背景に気づき、可視化していくことが、多様な人生を肯定することにつながると思います。
情報を発信・受信する「健康や命を守るリテラシー」

市川さん:これから情報を正しく選ぶために、私たちはどうすべきでしょうか。
尾高さん:いくつかポイントがあります。
1.情報が届く仕組みを知る:ニュースや広告がどのように自分のところに届くのかを理解すること。
2.ネガティブ・ケイパビリティー:分からないことを安易に決めつけず、あいまいなまま耐える力を持つこと。なんでも知りたいと思って、検索しすぎない。検索するほど偏っていく。
3.確かな情報を「選んで食べる」:情報の多くは無料のように見えますが、確かな情報はコストがかかっています。ときにはお金を払って新聞社や放送局などの信頼できる情報を得ることが、結果として自分の心と頭の健康を守ることにつながります。

市川さん:最後に、日本フェムテック協会に期待することを教えてください。
尾高さん:「異なる分野を混ぜること」かなと思います。メディア、教育、キャリア、そしてフェムテック。違う分野の人間が混ざり合うことで、フェムテックの輪はより強固に広がっていくと確信しています。
市川さん:いろんな気づきをいただけた回だと思います。愛と尊厳を持って情報とつき合っていく必要性を強く感じました。尾高さん、本日はありがとうございました。
※本記事の内容は、2025年6月18日に配信された内容です。最新情報は公式サイトよりご確認お願いします。
【登壇者】※2025年6月時点

・尾高泉 「教育とメディア」のコモンズ・キュレーター(現、教育とメディアのコモンズ・ラボ代表)、日本NIE学会常任理事長、国家資格キャリアコンサルタント、元日本新聞博物館館長

・市川美和 日本フェムテック協会理事、国家資格キャリアコンサルタント
【クレジット/協力】
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文/FYTTE編集部

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