恥垢は、においやかゆみの原因に！　専用ソープできちんと洗って膣を清潔に

「まずやってほしいのは、自分の膣のまわり（デリケートゾーン）をチェックすること。そして、清潔に洗うことです」と、山口さん。

「皆さんは、毎日鏡で顔を見て、顔色や肌の状態はチェックしていますよね。それに加えて、きちんと顔専用の洗顔料で洗い、化粧水や乳液で保湿。こういった入念なケアが当たり前になっている人は多いのではないでしょうか。では、デリケートゾーンはどうでしょうか？ 自分の体の一部なのに、『よく見たことさえない』という人もいませんか？ 外性器は思いのほか、複雑な形をしています。そして、顔がひとり一人違うように、形や色も人それぞれ違うんです。まずは、自分の形や状態をきちんと把握することが大事です」

山口さんによると、「チェックをする習慣がない」がために、デリケートゾーンが乾燥していたり、黒ずんでいたり、汚れがたまっていることに気づいていない人も多いそうです。こういったことが、においやかゆみといったお悩みや不調の原因にもなるそう。

「先にお伝えしたように、女性の外性器はヒダも多く、複雑な構造をしています。だから、細かい部分の汚れがたまりやすく、さっと流しただけでは汚れが落ちません。特に小陰唇（膣を覆うヒダの部分）のヒダの間は、恥垢と言われる尿やおりものが混ざった白っぽい垢が残りやすいです。こういった恥垢は、においやかゆみの原因にもなるので、きちんとソープを使って洗い流すことが大切ですが、ここで気をつけたいのがソープ選び。じつはデリケートゾーンは、角質層が薄く粘膜もあるので、まぶたと同じくらいに刺激に弱い場所。通常のボディソープやせっけんでは刺激が強すぎてしまいます。弱酸性タイプの『デリケートゾーン専用のソープ』がドラッグストアでも売っているので、こういった専用のものがおすすめです。また繊細な部分ゆえに、ゴシゴシこすって洗ったり、拭いたりすることもNG！ 皮膚が傷ついたり、黒ずんだりする原因にもなりますから、指の腹でやさしく洗いましょう。ただし、膣内は洗うのは厳禁です。膣には自浄作用があるので、洗う必要はありません」

冷え改善、代謝アップ、ツヤ肌…。「膣トレ」はいいこと尽くめ！

デリケートゾーンのチェックや正しい洗い方を実践すると同時に、山口さんが「全女性にとり入れてほしい」と念押しするのが「膣トレ」です。というのも、山口さん自身が、膣トレによって尿漏れ、肌のシミ、メンタル不調など、たくさんの悩みから救われたから。山口さんは、産後に膣トレと出合って以来、約20年間続けているそうです。

「前回の記事でもお伝えしたように、『膣トレ』とは、骨盤の底にある『骨盤底筋』を鍛えるトレーニングのこと。骨盤底筋には膣や尿道を締める働きがあるので、ここがゆるむと尿漏れなどのトラブルを招いてしまいます。膣トレはこういった尿漏れの改善や予防に効果てきめんですが、いいことはそれだけではありません！ 膣のまわりにはたくさんの毛細血管が集まっているため、骨盤底筋を鍛えることで血流もよくなります。それによって冷えが改善したり、代謝がよくなったり、肌の調子がよくなったり。尿漏れ対策としてはもちろんですが、なんとなく感じる不調の改善や、美容面においても効果的。私は産後なかなか落ちなかった体重が膣トレをはじめてから25㎏減できて、その後も太っていません。本当にあらゆる女性にいいこと尽くめなんです！」

骨盤底筋がゆるむ主な原因は、妊娠・出産。加えて加齢で筋力が落ちたり、閉経で女性ホルモンが減ったりすることも大きく影響します。しかし現代は、若くても、出産経験がなくても、ゆるんでいる人が増えているそうです。

「いまはデスクワークの人も多いですよね。こういった生活習慣や運動不足などで下半身の筋力が落ちたり、悪い姿勢などによって骨盤がゆがんだりすることも、骨盤底筋のゆるみにつながってしまいます。だから『まだ若いし』『出産していないし』という人も、決して他人事ではありません。それに『出産はこれから』という人にとっては、いまのうちから鍛えておくことで産後のゆるみの予防にもなりますよ」

骨盤底筋は、目に見えない筋肉。吸い上げる“イメージ”で動かすことが大事！

では、実際に「膣トレ」はどんなふうに行えばいいのでしょうか。骨盤のゆがみを整える動きや呼吸法などもプラスした山口さん流の「膣トレ」のやり方を教えていただきました。

「骨盤底筋はインナーマッスルといって体の内側にあり目で見ることができない筋肉です。
そのため、いわゆる腹筋やスクワットなどのように関節を動かす『筋トレ』とは少しやり方が異なります。骨盤底筋にアプローチするときは体の内側に意識を向けて、ギュッと締める“イメージ”を使って、動かすことがポイントです」
さっそく、次の３つのステップで行っていきましょう。
＜STEP 1＞骨盤を整える
＜STEP 2＞呼吸＋3つの穴を締める
＜STEP 3＞骨盤周りの血行をよくする

＜STEP 1＞骨盤を整える

骨盤は下半身の大きな筋肉とつながっています。そのため、骨盤がゆがむと筋肉がうまく使われず衰えがち。まずは、体の土台ともいえる骨盤を整えることから始めましょう。

あお向けに寝たら、足を腰幅程度に開きリラックス。骨盤の出っ張り部分に手を当てる。骨盤を左右交互に、かかとのほうへ押し出す。1分続ける。

＜STEP 2＞呼吸＋3つの穴を締める

イスに座った状態で、肛門→尿道→膣の順番に締めていくエクササイズ。呼吸と合わせて行うこともポイント。大きな呼吸をすると横隔膜が動きますが、それと連動して骨盤底筋も動かすことができます。

① イスに座って背すじを伸ばす。鼻から大きく息を吸って、口から吐くと同時にお尻の
穴に力を入れて肛門をギュッと締める。締めた状態を５秒キープ。これを10回行う。

② 同じように呼吸をしながら、今度は尿道をギュッと引き上げるように締めて５秒キープ。10回行う。

③ 同じように呼吸をしながら、膣をギュッと頭上へ引き上げるように締めて５秒キープ。
10回行う。

＜STEP 3＞骨盤周りの血行をよくする

最後に、骨盤周りの筋肉を動かしたり刺激したりして、膣周りの血流を促しましょう。冷え性やむくみ、生理痛の改善などにも効果的です。

＜１＞ カエル足トレーニング

両ひじ、両ひざを床につけて四つんばいになったら、両足を外側へスライドしてカエル足になる。胴体は床と平行にする。その平行な状態を維持したまま、胴体を頭からお尻方向へ。今度はお尻から頭方向へ動かす。これを1分くり返す。

＜2＞内転筋トレーニング

イスに深く座ったら、背すじを伸ばし姿勢を整える。足をそろえ、両ひざもピタリとくっつける。内ももに本やクッションなどを挟み、落とさないように内ももに力を入れて1分キープ。

どれもハードな動きではありませんが、実践するとじわじわと体が温まってきて代謝もアップ。また、骨盤底筋が鍛えられると、お腹もキュッと引き締まっていきますから、ぜひコツコツ続けていきましょう。

膣トレや膣ケアをはじめとした「フェムケア」は、生理痛や尿漏れなどトラブルに悩む人がやること。そんなふうに思っていた人も、少なくないのではないでしょうか。そうではなく、毎日顔を洗ったり、スキンケアをしたり、メイクをしたりするのと同じように、膣ケアが、「健康とキレイ」のための当たり前になってほしいと、山口さんは話します。
皆さんも、ぜひ今日から膣ケア、膣トレを習慣化してみませんか？

撮影／我妻慶一　イラスト／黒川ゆかり　取材・文／柿沼曜子