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睡眠は“削る時間”じゃない。Apple Watchで見直す、私たちの眠り
忙しい毎日の中で、つい後回しにしがちな睡眠。けれど眠りは、脳や体を休め、翌日のコンディションを整える大切な時間です。Appleが開催した「Apple Watch Sleep Experience」では、精神科医の西多昌規先生とプロトライアスロンコーチの中村美里さんが登壇。睡眠の役割や、Apple Watchを活用した“睡眠の見える化”について学びました。
Contents 目次
Apple Watchが“健康のパートナー”として進化

2015年の登場以来、Apple Watchは通知の確認やアクティビティの記録だけでなく、日々の健康を見守るデバイスとして進化してきました。Apple Watchが大切にしているのは、「アクティブに過ごす」「健やかに過ごす」「安全を見守る」「つながる」という4つの柱。その中でも近年、とくに注目されているのが睡眠に関する機能です。
睡眠中の呼吸の乱れをモニタリングし、中等度から重度の睡眠時無呼吸の兆候を検出する機能を搭載。睡眠時無呼吸は、自分では気づきにくい一方で、日中の眠気や集中力の低下につながることもあるといわれています。Apple Watchは医療機器として診断を行うものではありませんが、「もしかして?」と気づくきっかけになることは、日々の健康管理において大きな意味があります。
さらに2025年からは、睡眠スコア機能も追加されました。睡眠時間や就寝時刻、睡眠の中断などをもとに、0~100ポイントで睡眠の状態を可視化できる機能です。なんとなく「よく眠れた」「眠りが浅かった」と感じていたものが数値で見えることで、自分の睡眠習慣を振り返りやすくなります。
睡眠中、脳では“掃除”が行われている

早稲田大学教授で精神科医の西多昌規先生は、睡眠を「脳のクリーンアップの時間」と表現します。
睡眠中の脳では、「グリンパティック系」と呼ばれる仕組みが働き、脳内にたまった老廃物を洗い流していると考えられています。たとえば、アルツハイマー病との関連が指摘されるアミロイドβなども、睡眠中に排出される物質のひとつです。
この働きが活発になるのは、主に深いノンレム睡眠の時間帯。つまり、睡眠時間が短かったり、眠りが浅かったりする状態が続くと、脳を十分に休ませる機会が減ってしまう可能性があります。
西多先生は、過去に行われた長期間の不眠実験にも触れながら、睡眠不足が心身に与える影響について解説。睡眠が極端に不足すると、集中力や記憶力の低下だけでなく、幻覚のような症状が出ることもあるといいます。
また、日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い傾向があるとされ、慢性的な睡眠不足は、血圧やメンタルヘルス、生活習慣病のリスクとも関わると考えられています。「寝だめすれば大丈夫」と思いがちですが、毎日の睡眠を少しずつ整えることが、将来の健康を守るうえでも大切なのです。
アスリートが重視するのは「眠れた感覚」と「データ」の両方

一方、プロトライアスロンコーチの中村美穂さんは、日々選手のコンディションを見ている立場から、睡眠データの活用法を紹介しました。
中村さんがとくに重視しているのが、安静時心拍数です。
「翌朝の心拍数がいつもより高い場合、疲労が残っていたり、オーバートレーニングになっていたりするサインとして見ています。その日は練習の負荷を下げたり、リカバリーにあてたりする判断材料になります」(中村さん)
これはアスリートに限った話ではありません。たとえば、前日の夜にアルコールを飲んだ、遅い時間に食事をした、仕事のストレスが強かった。そんな生活の変化が、翌朝の心拍数や睡眠スコアに表れることがあります。
「昨日の過ごし方が、今日の体にどう影響しているのか」を知ることで、自分に合った整え方が見えてくるのです。
大切なのは、数値だけに振り回されないこと。Apple Watchのデータを見ながら、「たしかに今日は体が重い」「意外とよく眠れていたかも」と主観と照らし合わせていくことで、自分だけのコンディションの傾向がつかみやすくなります。
睡眠の質を上げるために、今日からできること

セッション後半では、参加者からの質問に対して、西多先生と中村さんが回答しました。
まず話題に上がったのが、夜の運動について。寝る直前の激しい運動は交感神経を高め、深部体温が下がりにくくなるため、入眠に影響する可能性があると西多先生。運動をする場合は、クールダウンをしっかり行い、眠るまでに少し時間を空けることがすすめられました。
中村さんも、選手には夜のハードな練習をできるだけ避けるよう伝えているそう。トレーニングの効果を高めるためにも、眠る前は心身を落ち着ける時間を作ることが大切です。
また、「自分に合った睡眠時間はどう知ればいいのか」という質問に対して、西多先生は「何時間が正解」と一律に決めるのではなく、日中の眠気や集中力、休日の寝坊の程度を見ることが重要だと説明。週末に極端に長く寝てしまう場合は、平日の睡眠が足りていないサインかもしれません。
女性にとって気になる生理周期と睡眠の関係については、生理前の黄体期に眠りが浅くなったり、日中に眠気が出たりするのは自然な変化のひとつと紹介されました。この時期は無理にがんばりすぎず、予定の入れ方や運動量を調整するなど、自分のリズムを受け入れる工夫も必要です。
さらに、レム睡眠が少ないと表示された場合については、まず睡眠時間全体を見直すことが大切とのこと。レム睡眠は睡眠の後半に増えやすいため、睡眠時間が短いと十分に確保されにくくなります。
睡眠を“感覚”だけで終わらせない
「最近、眠れていない気がする」「朝起きても疲れが残っている」。そう感じていても、忙しさの中で原因を深く考えないまま過ごしてしまうことは少なくありません。
けれど、睡眠時間や睡眠スコア、心拍数などを見ていくと、体は想像以上に正直に反応していることに気づきます。夜遅い食事、カフェイン、アルコール、運動、ストレス。毎日の小さな選択が、翌朝のコンディションにつながっているのです。
睡眠は、削るものではなく、明日の自分を整えるための時間。Apple Watchのようなツールを活用することで、なんとなくの不調を見える化し、自分に合った眠り方を探ることができます。
次の記事では、実際に「Apple Watch Sleep Experience」で行われた1泊2日の睡眠ステイをレポート。スローヨガ、マインドフルネス、睡眠を意識したディナー、翌朝のデータ分析を通して、FYTTE編集部がどんな気づきを得たのかをご紹介します。
取材・文/FYTTE編集部



