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「休んでも疲れがとれない」その原因は? 専門家が解説。心身を整える「先回りセルフケア」
日本の平均年間総実労働時間は、2006年から2025年までの20年間で、約150時間減少したことがわかっています(厚生労働省)。それにもかかわらず、『第一三共ヘルスケア』の調査データ(20~70代の男女を対象)によると、「休んでも疲れがとれない」と感じる人が増え、情報疲労社会へと変化していることが判明しています。そこで、20年間以上にわたり地域住民の健康を見守り続けてきた弘前大学副学長の村下公一先生の解説を交えて「セルフケアの20年間の変化と、これからの健康作り」についてご紹介します。
Contents 目次
なぜ? 20年間で労働時間は減少するも「疲れ」は増加

厚生労働省の調査によると、ひとり当たりの平均年間総実労働時間は、2006年の1,843時間から2025年には1,693時間へと、約150時間減少しています。今回の調査でも、40~70代の50.8%が「1日の労働時間が減った」(図1-1)と回答しており、働き方改革やワーク・ライフ・バランスの浸透が進んでいることがうかがえます。

ところが、それにもかかわらず、30~70代の71.9%が「休んでも疲れがとれない」(図3-1)と回答。労働時間が減っているのに、疲労感はむしろ増しているという、意外な結果が浮かび上がりました。
その背景として考えられるのが、情報過多による「情報疲労」です。
調査では、73.3%が「20年前に比べて情報が多く、必要な情報を取捨選択するのが大変」(図2-1)と回答し、75.6%が「世の中の変化や物事のスピードが速く、気ぜわしいと感じる」(図2-2)と答えています。
スマートフォンが本格的に普及したのは2008年以降のこと。20年前にはなかった「情報との付き合い方」そのものが、現代人の疲れの新しい要因になっているようです。
こうした状況を受けてか、73.5%が「メンパ(メンタルパフォーマンス=心理的な負担の少なさ)を重視する」(図3-2)と回答し、87.7%が「自分の健康や体調を自分で管理することが大切」(図3-3)と考えていることもわかりました。
20年間で変わる「セルフケア」の中身

セルフケアそのものの捉え方にも、大きな変化が見られます。
(図8)20年前、多くの人が考えるセルフケアは「病気を防ぐ」(24.0%)、「自分らしくいる」(21.5%)、「疲れを改善する」(19.8%)が上位でした。
一方、現在は「心を整える」(39.8%、+26.5ポイント)、「体の不調を未然に防ぐ」(36.0%、+21.0ポイント)、「病気を防ぐ」(35.6%、+11.7ポイント)の順に。病気になってから対処するのではなく、心身の不調を未然に防ぐ「先回りセルフケア」へと意識がシフトしていることがわかります。

セルフケアの実践率自体も、20年前の16.9%から現在は58.8%と、約3.5倍に上昇。
(図9)実際に取り組んでいる内容としては、「腸内環境・腸活」(+16.6ポイント)、「食生活」(+13.5ポイント)、「運動」(+13.1ポイント)、「睡眠・睡眠サポート」(+12.5ポイント)が大きく伸びています。

さらに注目したいのが、コロナ禍を経て広がった「メンパチョイス」の考え方です。
(図10)「ムリな人間関係を控える」(6.8%→28.3%、+21.5ポイント)、「会食や飲み会を控える」(4.5%→10.5%、+5.9ポイント)など、ムリをせず自分の心の負担を減らす選択をする人が増加。単に情報や選択肢を増やすのではなく、「今の自分に本当に必要なもの」を選びとる姿勢が、現代のセルフケアの特徴といえそうです。
出典:「セルフケア意識・行動の20年間の変化調査」(第一三共ヘルスケア)
実施時期:2026年6月18日(木)~6月22日(月)/調査対象:全国の20~70代の男女600人/調査手法:インターネット調査/調査委託先:楽天インサイト
専門家解説。セルフケアの20年間の変化と、これからの健康作り

こうした調査結果について、弘前大学副学長の村下公一先生はこのように解説しています。
セルフケアは「病気予防」から「ウェルビーイング」へ
村下先生は、セルフケアが「病気にならないための対策」から、「心身を整え、自分らしく過ごすための取り組み」へと広がっていると指摘します。「長生きだけでなく、日々の満足感や幸せを含む『ウェルビーイング』が重視される時代になってきていると感じます」と語ります。
情報過多の時代だからこそ、自分を整える視点が重要に
スマートフォンやSNSの普及によって、20年前と比べて情報過多による脳疲労が増えていると村下先生は分析します。睡眠や休息だけでなく、情報との付き合い方そのものがセルフケアになりつつあるといいます。「今回の結果からも、自分に合った健康との向き合い方を模索する人が増えていることがうかがえます」とコメントしています。
“先回りセルフケア”のヒント「3C」のすすめ

これからはウェルビーイングがますます重視され、自分の状態を知り、自分に合った方法でセルフケアを実践することが主流になっていくと村下先生は話します。そのヒントとして村下先生への取材内容をもとに整理されたのが、次の「3C」(3つのC)です。
Choice(選ぶ):情報を増やすだけでなく、今の自分に必要なものを選ぶ。
Customize(組み合わせる):睡眠、運動、食事などを自分の生活に合わせて組み合わせる。
Check(状態を知る):アプリやウェアラブル機器も活用しながら、自分の体と心の変化を把握する。
村下先生は、「AIやウェアラブル機器を活用して健康状態を日常的に把握する技術は、すでに実用化が進んでいます。将来的には、遺伝子や健康データから病気のリスクを予測し、不調になる前から対策する“先回りセルフケア”が当たり前になるでしょう」と、これからの健康作りの展望を語ってくれました。
労働時間は減っても、情報過多によって心も体も休まりにくい現代。だからこそ、自分に合った方法を「選び」「組み合わせ」「状態を知る」ことから、自分らしいセルフケアを始めてみませんか。

村下 公一(むらした こういち)先生
弘前大学副学⾧/東京大学グローバルWell-being総合研究所副所⾧・健康未来イノベーション研究機構⾧・教授。
青森県庁、ソニー、東大フェローなどを経て、弘前大学医学研究科教授に就任。2014年より現職。弘前大学COI拠点では副拠点⾧として産学連携マネジメントを総括し、弘前大学COI-NEXT拠点では拠点全体の総括責任者を務める。「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」では研究・社会実装戦略のコアとなるWell-being戦略を統括。文部科学省ほか政府系委員等多数。専門は、地域産業(イノベーション)政策論、社会(予防)医学。
文/FYTTE編集部



