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スマホやAIで疲れた脳を休ませるには? 1日30秒から始める小さな休養習慣。『休養学』片野秀樹先生に聞く第4回
『休養学』の著者で、一般社団法人日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹先生に休養についてお話を聞くシリーズの4回目。最終回の今回は、AIなど便利な技術との付き合い方、忙しい毎日のなかで活力を高めるためにできること、セルフマネジメントの重要性などについて伺いました。
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「環境が大きく変わっている」変化に合った休み方

――『休養学』の本のあとに、『疲労学』を出されましたが、疲労についても理解が進んでいない、教育が必要だという意図からでしょうか。
片野先生:『休養学』は、休養して活力を高めるためにはどうするかということを書きました。そのためには、反対側にある疲労をいかに抑制するかという方法についての知識も必要になります。『疲労学』は疲労をどう抑制するかにフォーカスした本になります。
――休養して活力を高めることと、疲労を抑制すること、どちらも大切ですね。この二本柱に対するリテラシーを高めていくために、どんなことに留意するべきでしょうか。
片野先生:国も個人のみなさんも目指しているのは「健康で豊かな明るい社会や暮らし」だと思います。そのために何をするかですが、このとき環境が大きく変わっていることを考慮しなくてはいけません。日々変わる環境のなかで無意識に生活していると、変化を見落としがちで、気がついたときには対応が手遅れになってしまいます。
パソコン、スマホ、AI…「脳も使ったら休ませること」を意識して

――環境の変化でいえば、顕著なのはデジタル機器の普及でしょうか。
片野先生:携帯電話やインターネットがなかった時代は、仕事が終わって会社から一歩外に出た瞬間に、自分のプライベートな時間として切り離すことができました。いまは切り離せない時代になり、ストレスがどんどんかかっている。ストレスは疲労を引き起こしますが、ストレスをどう解消するかというところに対する意識が高まっていない。非常にアンバランスな状態で、健康で豊かな生活を送れない状態だと思います。
では、いまパソコンやスマホ、はたまた仕事をやめられますかというと、やめられないのが現実です。だったらいかに私たちが対応していくのか、自分自身を変化させていけるのかということが、問われています。
――パソコンやスマホに加えて、近年、AIが私たちの生活に深くかかわり始めています。便利さを享受している面も大いにありますが、疲労を抑制しながらじょうずにつき合うためにはどんなことに気をつければいいでしょう。
片野先生:利用するなら、その裏側でどれくらい休ませるか、ということだと思います。過多な情報をどんどん受け入れてしまうと、脳は常に活動を続けてものすごくエネルギーを使います。肉体は比較的分かりやすいんですよ、疲れると動かなくなる。でも、頭って分かりづらいんです。肉体と同様、脳も「使ったら休ませる」。そのことを意識しないとバランスがどんどん乱れ、疲労の抑制どころか新たな疲労を生んでしまいます。
デジタル疲れを防ぐカギは「切り替え」! オン・オフのセルフマネジメント

――いわゆるデジタルデトックスのようなことを、積極的に休養をとりにいくことのひとつの方法としてとり入れることが、技術やデバイスを使いこなす、さらにはいまの時代をうまく生きることにつながるということでしょうか。
片野先生:脳の神経ネットワークには、集中しているときに活発になるワーキングメモリ・ネットワークと、ぼんやりしたりのんびりしたりしているときに活発になるデフォルトモード・ネットワークがあります。スマホやパソコンの操作はワーキングメモリを使いますが、使いすぎると重い負荷がかかり、活動能力が低下してしまいます。
電車のなかではスマホではなく、外の景色を見てボーッとするだけでもいいと思うんです。でも、スマホを見ているとドーパミンが出やすい。ドーパミンが出ていると心地よいので、やめられなくなってしまう。そこを自分で断ち切る! オンとオフを意識する、そういった自分自身のマネジメントが必要になってきています。
先ほどお話しした休養7タイプのなかに「娯楽タイプ」がありますよね。娯楽タイプというのは、カラオケをする、音楽を聴く、ドラマを見るなど、趣味や好きなことを追求する休み方です。ただし、ここで注意しなければいけないのも、セルフマネジメントという「セルフコントロールをすること」です。
ドラマを何時間も見続けてしまう、AIで朝までずっと会話してしまうというのは、セルフマネジメントができていない状態。休むという目的意識がしっかりしているのであれば、セルフマネジメントという言葉を肝に銘じながら利用するということが必要になります。
1日30秒から始める“小さな休養” が、よりよい暮らしにつながる

――読者のみなさんに、活力あるよりよい暮らしを送るために、休養や疲労とのじょうずなつき合い方、心構えについて、メッセージをいただけますでしょうか。
片野先生:読者のなかには、育児や介護をされている方もいらっしゃると思います。自分の時間が非常に少なく、とても疲れているのではないでしょうか。そういう方々とお話しすると、「私には時間がない」「とにかく忙しい…」と話されます。「でも、休まないで生きていける人っていないですよね」と言葉を返すと、「いない」ということは理解されている。
どこかで休まなくてはいけないのだから、自分でオフの時間を作り出すということにもとり組んでほしいと思います。たとえば、トイレに行ったときにはふだんより長く留まり、30秒でもいいから目をつぶってしっかりと呼吸をしてみるとか、目をつぶったまま自分が行きたい場所をイメージしてみるとか。車で買いものに行ったら、家に着いてすぐに車から降りるのではなく、車のなかで30秒ボーッとする。この30秒だったらできるのではないでしょうか。それだけでも自分の活力は小さくアップします。つまり、小さなオフのくり返しも休養なんです。
自分のペースをとり戻すことにもとり組んでいただきたいです。たとえば1か月に4日の休日があったら、子どもに4日すべて合わせるのではなく、2日は子どものペース、1日は夫のペースに合わせ、あと1日は自分のペースで過ごしてみる。自己犠牲精神が強い傾向がある女性には、自分のペースをとり戻すことへの意識が特に重要だと思います。主導権をもって、すべて自分で選んで自分で決断することがポイントです。
休養を味方につけて、自分のペースと活力をとり戻そう
これまで4回にわたり、片野先生に休養についてお話を伺ってきました。休養は、ただ活動を止めたり、長く眠ったりすることではなく、次の活動に向けて活力を高めるための大切な時間です。
自分に合った休み方を見つけるには、これまでの休養行動を振り返り、心身の状態に合わせて、休養と疲労を抑える行動を日々の生活に組み込んでいくことが重要です。
忙しい毎日のなかで、まとまった休養時間を確保するのが難しい場合でも、目を閉じて呼吸を整える、景色を眺めるなど、わずかな時間でできる休養行動があります。大切なのは、忙しさに流されるままにせず、自分の状態に目を向け、自分の意思で休む時間を作ること。片野先生は「ハードルを上げすぎず、小さなことからでいいので、ぜひ休養のための一歩を踏み出してみてください」といいます。
完璧な休み方を求めるのではなく、いまの自分にできることから始め、その積み重ねによって自分のペースをとり戻していきましょう。休養を味方につけることが、活力あるよりよい暮らしにつながっていきます。
取材・文/FYTTE編集部



