「免疫」は自身に不要なものを敵として攻撃し、必要なものには攻撃せず体内に取り込むという働きによって、私たちの健康バランスを保ってくれています。免疫力が強すぎず弱すぎずちょうどよくあるためには、どんな生活を心がければよいのでしょうか。内科医の工藤あき先生にお話を伺うシリーズ、4回目の今回は「免疫と運動」について教えてもらいました。
Contents 目次
人間の機能は「動いていたころの時代」に合わせて備わっている

前回は、免疫とメンタルには深い関係があり、ストレスは体内に炎症を起こすため、心も体もリラックスさせることが免疫力を保つためには大切だというお話でした。では、免疫は運動とどのような関係があるのでしょうか。
『医師に聞いた。ストレスが免疫力の低下を招くことも。見過ごすことができない免疫とメンタルの関係とは?』
「リラックスというと体を休ませるほうに発想がいってしまうかもしれませんが、できるだけ体を動かすのが大事です。ずっと昔の時代ならば、人間はもっと動いていたはずですよね。そのくらい体を動かすことを前提条件として人間の体は機能しているからです。
筋肉を動かすとマイオカインというホルモンが出ます。主な働きとしては、筋肉を合成促進するほか、炎症を抑える作用、脂肪細胞に作用して代謝を促す作用、免疫細胞の活性化、認知機能の向上などが言われています。細胞レベルの研究では肌への抗炎症効果も期待できます。
また、脳からもセロトニンやドーパミンなどストレスに対抗するようなホルモンが分泌されるというメリットもあります。
もちろん寝込む寸前とか風邪で熱があるときなどは、完全に体を休めていいのですが、通勤時に多めに歩くとか、犬の散歩をするとか、家事をするときでも体を意識的に動かしておかないと現代人は運動不足になってしまうかなと思います。
強度としては軽く息が上がるぐらいの運動がベストと言われているので、私も歩くときは、坂道を早歩きするなど、少し息が上がる部分もとり入れています。ずっと息を切らして動き続けるのは運動として続かないと思いますし、きつ過ぎる運動は活性酸素ができてしまうので、これはこれで逆効果になってしまいます。
“気持ちがいいな、楽しいな、体がラクだな”--そのぐらいの強度で30分の運動を週3回程度(理想は1日20~60分、週3回以上を目安に長期間継続することが奨励)あるいは毎日10分くらいでも積み重ねていけば運動量につながります。できる範囲でいいと思いますよ」(工藤あき先生。以下同)
朝の20分で体を動かしながら、「無」を意識する時間も作る

デスクワークが多く、子育てに仕事にと忙しく、まとまって時間をとるほどまでは運動が好きというわけでもないと言う工藤先生。体を動かすために、どのような工夫をしているのでしょうか。
「朝の時間を活用し、ちょっと早起きをして散歩に出かけます。ランニングは苦手なので、少し息が切れるくらいの早足で往復で20分くらい。帰ってきて時間があれば筋トレをしたり、 ラジオ体操をしたりします。その後、子どもを起こして1日の生活が始まります」
散歩をとり入れるようになってから、何か変化はあったのでしょうか。
「朝の気分はとてもさわやかですよね。晴れれば朝日が見られますし、頭がクリーンになる感じが朝から得られるのもいいものです。日頃、知りたいことや調べたいことがたくさんあるので、歩いているときも耳からは知識を得ようとイヤホンをして出かけるのですが、途中の川のせせらぎが聞こえるところでは、必ずイヤホンをはずします。“今、私は癒されているはず”。ストレスマネジメントになっているはず”と、自己暗示をかけつつ、意識的に『無』になるようにしています。
いろいろなことをインプットしても、頭がパンパンになった状態では効率よく吸収することはできません。体を動かして脳ではなくて体が疲れることをしたり、あえて何も行動しない時間を少しとると、頭がすっきりしてストレスを解消できている感じがします。夜の睡眠にもいい影響があるようです」
座りっぱなしを避けるために仕事部屋のイスを撤廃

工藤先生がもうひとつ心がけているのは、座りっぱなしの時間を減らすことです。
「座り過ぎはさまざまな疾患のリスクになると言われています。なかでも自分の専門分野である大腸がんのリスクも上がるという話を知ってショックを受けました。それがきっかけとなり、何か自分の身の回りで工夫できることはないかと考えて、家の仕事場のイスを撤廃することにしました。
病院で診察するときはもちろん座って行いますので、診察と診察の合間にちょっとストレッチやスクワットをしたりとか、太ももを伸ばしてみたりとか。気がゆるむとついつい座りっぱなしになるので、まずいまずいと思って意識して立ち上がるようにしています」
プロも健康のために小さな工夫と努力を積み上げているのですね。私たちも日常の中で工夫できることをとり入れながら、ちょうどよい免疫バランスを目指して生活していきましょう!
みなさんの「カスタム免疫ケア」習慣の参考になれば幸いです。
取材・文/森下真理



