「病気にならないこと」から「納得感を持って年齢を重ねること」へ。今、ウェルエイジングという考え方が注目されています。とくに更年期やキャリア、介護など複合的な不安を抱えやすい40〜50代女性。情報過多のSNS時代だからこそ見直されている「書くセルフケア=ジャーナリング」について、調査データと専門家の解説を交えてご紹介します。
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なぜ今「ウェルエイジング」なのか

今、日本は超高齢社会の真っただ中にあり、2040年前後には団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢者人口が大きなボリュームを占めることが見込まれています。こうした社会背景のなかで、これまで重視されてきた「健康寿命の延伸」だけでは十分ではない、という声が広がりつつあります。
とくに40~64歳のミドル世代は、仕事や家庭で責任が集中しやすく、自分自身のケアを後回しにしがちな時期。内閣府の「満足度・生活の質に関する調査報告書2026」でも、40~64歳はほかの年代と比べて生活満足度が低い結果が出ており、加齢による身体的な変化や人生後半への移行に伴う心理的な負担が存在していると考えられます。
これまで年齢の重ね方といえば、「いかに若く見せるか」「老化を防ぐか」というアンチエイジングの考え方が主流でした。しかし、年齢を重ねること自体をネガティブに捉える価値観は、多様な生き方が尊重される今の時代とは少しずつギャップが生まれてきています。
そこで近年注目されているのが、加齢を自然な変化として受け入れながら、心身の健康や生き方を整えていく「ウェルエイジング」という考え方です。「若さを保つ」ことよりも、「納得感を持って年齢を重ねる」ことに価値を置く企業やブランドも増えてきました。
40~50代女性が抱える、複合的な不安


ミドル世代のなかでも、とくに40~50代女性は、心身の変化が重なりやすい時期にあります。更年期による体調変化に加え、キャリアの停滞感、親の介護、子どもの独立、夫婦関係の変化など、複数のライフイベントが同時に訪れやすく、将来への不安や戸惑いを抱えやすい世代といえるでしょう。
近年は、こうした人生の転換期に生じる心理的な葛藤を示す「ミッドライフクライシス(中年期危機)」という言葉への関心も高まっています。さらに特徴的なのは、その不調や不安の原因がひとつではなく複合的であり、かつ周囲から理解されにくいということです。
また、キューサイの「不調に関する意識調査」によると、40~50代女性の多くが自分の不調について相談しづらさを感じており、「大げさだと思われそう」「理解してもらえないのではないか」といった不安が上位にあがりました。一方で、不調への向き合い方については、前向きな対処を望む声が約半数を占めるものの、「まだ分からない」と回答した人も約2割存在しています。誰にも言えないまま、モヤモヤとした気持ちを抱え込んでいる人も少なくないのかもしれません。
タイパ全盛時代に、あえて「紙に書く」が見直されている

現代の私たちはスマートフォンやSNSの普及により、大量の情報を手軽に得られるようになりました。その一方で、短時間で情報を消費し続ける環境は「情報疲れ」や「深く考える時間の不足」を生み出しているとも指摘されています。
NTTドコモ モバイル社会研究所の「2025年 SNS利用者行動調査」でも、SNS利用による情報疲労を感じている人は多く、とくに女性はその傾向がより強く表れています。
40~50代女性が抱える健康やキャリア、家族、老後への不安は、SNSを眺めるだけで簡単に解決できるものではありません。自分自身と向き合いながら、考えを整理する時間が必要です。そんななか、書籍やノートは、自分のペースで読み進め、必要なときに何度でも立ち返ることができるというのが特長です。流れていってしまう情報ではなく、手もとに残り続ける情報であることに加え、この世代は雑誌や書籍、CDなどのアナログメディアに親しんできた世代でもあります。子どもの独立などを機に、自分自身と向き合う時間が増える時期でもあることから、人生後半の生き方や価値観を見つめ直したい40~50代女性のニーズと高い親和性があるといえそうです。
実際に、スマートフォンやSNSによる情報過多への反動からか、あえて紙に書いて思考や感情を整理する「ジャーナリング」が、セルフケアやメンタルヘルスケアの手法として若年層を中心に広がっています。Googleトレンドの調査では、ジャーナリング関連の検索ボリュームは年々増加しており、5年前と比べて約700%増という結果に。デジタルネイティブであるはずのZ世代が、あえて「紙に書く」という行為を進んで行っていることは、この手法が改めて再評価されていることの表れともいえるでしょう。
精神科医のTomy先生に聞く、ジャーナリングの効果

では、書くことには、どのような効果があるのでしょうか。
SNSで総フォロワー数50万人を超える精神科医のTomy先生は、書くことについて次のように解説しています。
「頭の中だけでぐるぐる考えているだけでは、自分の状態の『正体』はなかなか見えてこないもの。それを言葉にしてはじめて、何が気になっていたのかがわかってくる」といいます。頭の中にある思いを目に見える「文字」にすることで、自分の状態を客観的に捉えやすくするというメンタルケアの観点でも意味のある行為なのだそう。
また、書くことは認知行動療法の考え方とも親和性が高いとされています。
認知行動療法とは、自分の思考や感情のパターンに気づき、それらを整理しながら行動の変化につなげていく心理療法のこと。ジャーナリングも、不安や悩みを言葉にして書き出すことで、自分を客観的に理解するプロセスに沿ったものだといえます。
うまく書けなくてもいい、というのもポイントです。最初からじょうずに言語化しようとしなくてOK。何度もくり返すうちに、少しずつ言葉にするコツがつかめるようになっていくものです。「気づき」をただ書くだけでもいい、と気負わずに始められるのも、ジャーナリングの魅力のひとつです。
実際にやってみる! ジャーナリングの始め方

「書いてみたいけれど、何から始めればいいかわからない」という人は、精神科医のTomy先生に教えていただいた、シンプルな4つの問いに沿って書き出す方法を試してみてください。答えるのはこの4つだけ、とてもシンプルです。
(1)気づき:今日、体や心について気になったことは?
どんな小さなことでも大丈夫です。ふと感じたこと、たとえば「今日はいつもよりよく眠れた」「なんとなく気分が沈んでいた」といったことをそのまま書きとめてみましょう。
(2)理解:その気づきは、あなたに何を教えてくれていると思いますか?
気づいたことがなぜ起こっているのか、少し立ち止まって考えて書き出してみます。
(3)行動:それに対して、何か行動しましたか? または、したいと思いましたか?
小さな一歩でも構いません。思ったことや実践したことを書いてみましょう。
(4)変化:その行動や気づきによって、何か変わりましたか?
一見関係なさそうなことでも、書いてみると意外なつながりが見えてくることがあります。些細な変化でもいいので書いてみましょう。
この4つの問いは、日々の小さな気づきを、行動や変化へとつなげていくための道しるべのようなもの。毎日きちんと書けなくても大丈夫。書けた日はちゃんと自分をほめてあげる、それだけで十分なのだそうです。
日常のなかで見過ごしてしまいがちな、体や心の小さなサイン。それを言葉にして書きとめる習慣は、これからの自分らしい年齢の重ね方を考える、小さいけれど確かな一歩になるかもしれません。忙しい毎日の中で、ほんの数分でいいので、自分と向き合う時間を作ってみてはいかがでしょうか。
参考元:キューサイ「更年期、介護、キャリア…40~50代女性に寄り添う『書くセルフケア』とは?」『わたしの気づきダイアリー』
文/FYTTE編集部



